1番佐藤の執念が劇的幕切れを呼ぶ
杜若|000|010|010|2
豊西|000|100|002|3
この原稿を書くときに9回の時点ですでにタイトルが決まっていた。
「直球勝負エース対決三輪に軍配」
しかしドラマは9回2アウトに待っていた。
県内有数の進学校にて県予選の上位常連校である豊田西に対して前評判はさほどよくなかった杜若は長身のエース三輪を軸にここまで上がってきた。
豊田の高校対決である。
序盤は両者落ち着いた立ち上がり、ただ上杉の球の走りが悪い印象を得る。
ところが先に点をとったのは豊田西。
4回裏連打で1点を先制。
その後は攻守に阻まれ追加点ならず。
点をもらったことに気を良くしてか上杉の球が走り出す。
ゆったりとしたフォームから打者の胸元へずばりと決まる。
ただこういうときに落とし穴がある。
真ん中に集まりすぎたせいか連打を浴びて1点返される。
5回裏、8回裏とチャンスをつぶした豊田西に対して8回表勝ち越し点を上げた杜若、試合は9回裏へと進む。
先頭バッターの上杉に代打を送られ同時に彼の投球は終わった。
1死の後1番佐藤がファールで粘る。
結局三進に倒れ二死。
2番重光のライナー性の打球はセカンドがジャンプ一番捕球、と思いきやほんのわずかおよばず外野へ。
そして、3番山下。
振り切った打球はレフトの頭上へ。
名門校を相手にとことんまで追い詰めていた三輪の、杜若の甲子園への道は閉ざされた。
最大の殊勲者は山下だが、佐藤のあきらめないねばりがその後のヒットと本塁打を呼んだと思う。
試合終了直後、顔の汗をぬぐおうとしたら自分が泣いていることに気づいた。
意識することなく自然に涙が出ることなどなかったのでなんで泣いているのか最初は自分でもわからなかった。
ただグラウンドでうずくまる杜若の選手、そして決してあきらめなかった豊田西の選手、両方の一生懸命さに感動したのだと思う。
私にとっても忘れられない試合となった。